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動画の60fps化をスマホだけで完結させる方法|数字を上げても滑らかにならない理由
変換サイトやアプリで 30fps の動画を 60fps にしたのに、見た目がまったく変わらなかった——これはやり方を間違えたのではなく、そもそも別の処理をしていたことが原因です。この記事では「fps の数字を上げること」と「実際に動きを滑らかにすること」を最初に切り分け、そのうえで iPhone だけで完結させる手順と、PC ソフトのほうが向く場面を正直に整理します。
60fps化には2種類ある — ここを間違えると滑らかにならない
「動画を60fps化する」と一口に言われますが、その中身はまったく違う2つの処理に分かれます。この区別が曖昧なまま作業すると、ファイルの情報欄には 60fps と表示されているのに動きは1ミリも変わらない、という結果になります。多くの人が原因不明のまま再検索している行き詰まりは、ほぼここに集約されます。
フレーム複製・ブレンド:数字は 60fps になるが動きは変わらない
1秒あたり30コマの映像を60コマに増やすとき、いちばん簡単なのは既にあるコマをもう1枚コピーして並べる方法です。1コマ目、1コマ目、2コマ目、2コマ目……という具合に並べれば、合計のコマ数は倍になり、動画の情報としては 60fps になります。しかし実際に絵が変化するタイミングは元の30回のままなので、動きの見え方は変わりません。
もう少し手の込んだやり方として、前後のコマを半透明で重ねた中間画像を挟む「ブレンド」もあります。こちらは間に別の絵が入るので数字上は滑らかに近づきますが、動いている被写体が二重に見える残像が発生し、かえって見づらくなることがあります。動きの速い場面で試すとすぐに分かります。
フレーム補間:AI が中間のコマを新規生成する
もう一方がフレーム補間(フレーム補完とも書かれます)です。前後2枚のコマを見比べて、被写体がどの方向にどれだけ動いたかを推定し、その中間時点にあったはずの絵を新しく描き起こします。コピーでも重ね合わせでもなく、存在しなかった1枚を作るので、コマの間隔が実際に細かくなり、動きがつながって見えます。
この推定を担うのが AI のモデルです。近年は RIFE のような軽量なモデルが登場し、以前は PC の GPU がなければ現実的でなかった処理が、スマホのニューラルエンジン上でも動くようになりました。「動画を60fps化するアプリ」を探すときに本当に見分けたいのは、そのアプリが複製側なのか補間側なのか、この一点です。
| 観点 | フレーム複製・ブレンド | フレーム補間(AI) |
|---|---|---|
| 中間のコマ | 既存のコマをコピー、または前後を半透明で重ねる | 動きを推定して新しい絵を生成する |
| 動きの見え方 | 変わらない。ブレンドでは残像が出る | コマの間隔が細かくなり、動きがつながる |
| ファイル情報の表示 | 60fps になる | 60fps になる |
| 処理時間 | 短い(実質は再エンコードのみ) | 長い(生成するコマの数だけ推論が走る) |
| 主な提供元 | オンライン変換サイト、汎用の編集アプリの書き出し設定 | フレーム補間に特化したソフト・アプリ |
| 向いている目的 | 納品フォーマットを規格に合わせる | 実際に滑らかにする |
ファイルの情報欄に表示される数字だけでは、どちらの処理が行われたか判別できません。確かめる方法は、動きの速い部分を等倍で再生して元の動画と見比べることだけです。
変換サイトで滑らかにならなかった人へ
「動画の60fps化はサイトで済ませたい」という発想は自然です。インストールも会員登録も不要で、ブラウザにドラッグするだけで終わるように見えます。ただし、無料のオンライン変換で期待どおりの結果になりにくい理由は構造的なものです。
オンライン変換の実態
汎用のオンライン変換サービスが提供しているのは、多くの場合フォーマットとパラメータの変換です。指定した fps でコンテナとコーデックを書き直す処理であり、AI で中間のコマを生成しているわけではありません。1本あたり数十秒で終わるのはそのためで、逆に言えば、その速さは補間をしていない証拠でもあります。
- アップロードが必須:手元の動画を回線経由でサーバーに送る必要があり、数百 MB の素材では変換より送信のほうが長くかかります。
- ファイルサイズと長さの上限:無料枠には上限が設けられているのが一般的で、スマホで撮った数分の動画でも弾かれることがあります。
- 処理内容が複製寄り:中間コマの生成をうたっていないサービスは、数字だけ 60fps に書き換えて返してきます。
- 再エンコードによる劣化:滑らかさは得られないまま、圧縮のかけ直しで画質だけが落ちる場合があります。
動画を他人のサーバーに上げるということ
技術的な話とは別に、判断しておきたい点があります。オンライン変換は、自分の動画を第三者のサーバーに預ける行為です。家族や子どもが写っている映像、仕事で撮影した未公開素材、場所が特定できる風景——こうしたものを預けるかどうかは、規約に保存期間が書かれているかどうかとは別の問題として考える必要があります。
後述するオンデバイス処理のアプリは、この工程がそもそも存在しません。動画が端末の外に出ないため、アップロード時間も上限も、預けることへの判断も発生しません。
スマホで60fps化する選択肢を検証する
「フレーム補間をスマホで、できれば無料で」と検索すると、たくさんのアプリ名が並んだ記事が出てきます。しかしそこに挙がっているアプリの多くは、実はフレーム補間の機能を持っていません。カテゴリごとに何ができて何ができないのかを整理します。
汎用編集アプリの「fps 設定」は補間ではない
動画編集アプリの書き出し画面には、たいていフレームレートの項目があります。ここで 60fps を選べるので補間機能があるように見えますが、その多くは「この fps で書き出す」という指定であって、足りないコマは複製で埋められます。編集アプリの役目はカット・テロップ・音声の調整であり、中間コマの生成は本来の担当範囲ではありません。
また、写真や動画の解像度を上げるアップスケーラー系のアプリも、フレーム補間とは別のジャンルです。画素を増やす処理とコマを増やす処理は目的も仕組みも異なるため、混同しないようにしてください。この2つは同じ「きれいにする」という言葉で語られがちですが、片方をやってももう片方は起きません。
再生専用プレイヤー(MEMC 系)は書き出しができない
スマホ向けの動画プレイヤーの一部には、再生しながらリアルタイムで中間コマを作る機能(MEMC などと呼ばれます)が搭載されています。テレビの倍速表示と同じ考え方で、その端末で見ている間は滑らかになります。
ただしこれは再生時の処理なので、結果をファイルとして保存・書き出しすることはできません。自分で見るだけなら十分ですが、SNS に投稿したい、他の人に送りたい、編集素材として使いたい場合には使えません。
書き出しまでできるフレーム補間アプリ
iPhone でフレーム補間を行い、結果をファイルとして保存できるのが、補間に特化したアプリです。なめらか動画くんはこのカテゴリで、RIFE を Core ML に変換して端末内で動かし、生成したコマを含めた動画を書き出します。
| 選択肢 | 中間コマの生成 | ファイルとして保存 | 動画の送信 |
|---|---|---|---|
| オンライン変換サイト | 基本的にしない(複製・再エンコード) | できる | 必要 |
| 汎用の編集アプリ | 多くはしない(fps 指定のみ) | できる | 不要 |
| MEMC 対応プレイヤー | する(再生中のみ) | できない | 不要 |
| フレーム補間アプリ | する | できる | 不要 |
iPhone で60fps化する手順
ここからは実際の流れです。iOS 16.0 以降の iPhone が対象で、iPad には対応していません。
- 動画を選ぶ写真ライブラリから対象を選びます。10秒を超える動画でも、先頭10秒だけを切り出して無料で試せるので、まず自分の素材で効果を確かめてから先に進めます。
- 再生時間モードを決める尺を変えずにコマだけ増やす「同じ長さ」か、尺を伸ばす「スローモーション」を選びます。60fps化が目的なら「同じ長さ」です。
- フレームレートを選ぶ同じ / 30 / 60 / 120fps から指定します。元の動画のフレームレート以下は選べない仕様なので、30fps の素材なら 60fps か 120fps が候補になります。
- 出力解像度と保存品質を決める解像度は「変更なし」または 480p〜4K(数値は動画の高さで、縦横比は保たれます)。保存品質は低・中・高(3 / 8 / 20Mbps)から選びます。
- 推論解像度を決めるAI が内部で処理する画像の大きさです。上げると推定の精度が上がりますが、処理時間とメモリ使用量も増えます。
- 予測を確認してキューに追加変換後のフレームレート・再生時間・ファイルサイズ・処理負荷の見込みが表示されます。ここで想定と違えば設定に戻ります。
- 完了後に見比べて保存処理が終わると通知が届きます。変換前と変換後をスプリットスライダーで比べ、納得できたら写真ライブラリか「ファイル」アプリに保存します。
60fps / 120fps の選び方と処理時間の目安
30fps の素材を 60fps にする場合、コマの隙間ごとに生成するのは1枚です。同じ素材を 120fps にすると隙間ごとに3枚必要になるため、生成するコマの数は単純計算で3倍になります。「動画の120fps化をスマホでやりたい」という場合は、処理時間もおおよそそれに比例して伸びると考えてください。
処理時間を左右するのは、目標フレームレート、推論解像度、動画の長さ、そして端末の世代です。絶対値は機種によって差が大きいため、キュー追加前に表示される処理負荷の予測を目安にするのが確実です。まずは短い区間を低めの設定で1本通し、体感を掴んでから設定を上げるのが遠回りになりません。
表示側の事情も判断材料になります。多くの iPhone の画面や一般的な SNS の再生環境は 60fps が基準です。120fps が生きるのは、対応した高リフレッシュレートの画面で再生する場合や、後で編集ソフトに取り込んでスローにする素材として使う場合です。撮影後にスローモーションにしたいなら、後からスローモーションにする手順のほうが目的に近いはずです。
通信オフ・機内モードでも動く理由
処理はすべて端末内で完結します。動画をどこかに送信して結果を受け取る仕組みではなく、AI のフレーム補間をローカルで実行しているため、機内モードのままでも変換できます。通信するのは App Store での価格取得・購入・復元のときだけで、サードパーティ製のライブラリや解析 SDK は一切組み込んでいません。
実用面でも差が出ます。アップロードの待ち時間がなく、ファイルサイズの上限もなく、電波の弱い場所でも移動中でも同じように動きます。長時間の処理では「処理中は画面をロックしない」設定(無料版でも使えます)を有効にしておくと安定します。
PC ソフトと比べてどうか
フレーム補間について調べると、PC 向けソフトの解説記事が大量に出てきます。それらは基本的に自社の PC ソフトを販売しているため、結論は必ず「PC ソフトを使いましょう」になります。ここでは売り手側の立場を外して比較します。
環境構築と待ち時間というコスト
PC の補間ソフトは、性能の面では有利です。一方で、始めるまでの手間は無視できません。無料で高品質な選択肢として知られる Flowframes は Windows 専用で、Mac 版が存在しません。Mac ユーザーはこの入口で止まります。
加えて、GPU のドライバやランタイムの導入、モデルの選択、パラメータの調整といった前準備が必要になることがあります。そしてスマホで撮った動画を PC に転送し、処理し、また端末に戻す往復も発生します。数分の動画を1本だけ滑らかにしたいとき、この往復が作業時間の大半を占めることは珍しくありません。
スマホが向いているケース/PC が向いているケース(正直に)
どちらが優れているかではなく、素材と目的で決まります。
- スマホが向く:撮った動画がそのまま iPhone にある。数十秒〜数分の短い素材。SNS に上げるまでを片手で終わらせたい。動画を外部に出したくない。PC を持っていない、または使いたくない。
- PC が向く:10分を超える長尺。何十本もまとめて処理する。4倍・8倍と大きく倍率を上げて緻密な結果が必要。補間モデルやパラメータを細かく比較したい。処理中も別の重い作業を並行したい。
スマホ側の弱点も明確です。長尺になれば処理時間は素直に伸びますし、重い設定では 2GB 以上のメモリを使うため、メモリの少ない機種(おおむね iPhone 12 以前)では iOS に処理を終了させられることがあります。その場合は推論解像度や出力解像度を下げるか、短く区切って処理してください。iOS のバックグラウンド処理も、システムが与える猶予時間の制約上、最大30秒までです。処理を続けたいときは画面を表示したままにしておく必要があります。
30fps と 60fps は実際どのくらい違うのか
30fps では1コマが約33ミリ秒、60fps では約17ミリ秒表示されます。この差が見た目にどう出るかは、映像の中身によってかなり変わります。
- 差が大きく出る:カメラを横に振るパン、手持ちの歩き撮り、スポーツやペットなど速く動く被写体、画面内を文字や背景がスクロールしていく映像。30fps では動きが飛び石のように途切れて見えますが、60fps になると軌跡がつながります。
- 差が分かりにくい:三脚での固定撮影、会話中心のシーン、動きの少ない風景。もともとコマの間で被写体があまり動いていないため、コマを増やしても変化が乏しくなります。
もう一点、滑らかさは常に正解ではありません。映画的な質感を狙う場合、あえて 24fps や 30fps のままにするほうが意図に合います。60fps化が効くのは「動きを正確に見せたい」映像です。なお、再生がぎこちない原因がフレームレートではなく再生環境側にあることもあるので、そちらが疑わしいときは動画がカクカクする原因の切り分けも確認してください。
60fps化が効かない・不自然になるケース
期待した結果にならない条件は、あらかじめ知っておくと無駄な試行を減らせます。
- 元がすでに 60fps 以上:元のフレームレート以下は選択できません。60fps の素材をさらに滑らかにしたい場合は 120fps が選択肢になります。
- もともと複製で作られた「見かけの 60fps」:実質 30fps の動きを持つ 60fps ファイルは、コマが同一なので変化を推定しにくく、効果が薄くなります。
- 強いモーションブラーが焼き付いている:被写体が最初からぶれて写っている場合、ぶれた絵の中間が作られるだけで、輪郭がはっきりするわけではありません。
- カットの切り替わり:無関係な2つの絵の間を無理につなぐと、一瞬にじんだコマが挟まることがあります。
- 動きが速すぎる・手ぶれが激しい:前後のコマで対応する場所を見失い、輪郭がゆがむことがあります。
- 半透明・水しぶき・細い格子・素早く動くテロップ:推定が難しい要素で、部分的に破綻が出やすい領域です。
重要な前提として、フレーム補間で得られるのは動きの滑らかさだけです。なめらかになりますが、画質そのものは良くなりません。解像度の設定は保存サイズを指定するもので、小さい映像を大きい数値で書き出しても、失われた細部が戻ることはありません。ぼやけ・ノイズ・圧縮の粗さを改善したい場合は、フレーム補間とは別の対処が必要です。
不自然さが出たときの調整は、推論解像度を上げる、目標フレームレートを 120fps から 60fps に下げる、破綻の出る区間を切り出して個別に処理する、の順で試すのが効率的です。処理後はスプリットスライダーで変換前と並べて確認できるので、保存する前に判断できます。
よくある質問
無料でどこまで使えますか
無料版では10秒以内の動画を最大 60fps まで変換でき、60fps化した動画はそのまま保存できます。推論解像度は低、保存品質は低、出力解像度は「変更なし」に固定され、キューは1本ずつ、バックグラウンド処理はできません。10秒を超える動画も、先頭10秒だけを切り出して無料で試せます。
なお、スローモーション(2倍・4倍)は無料でも作成して結果を確認できますが、保存には Pro 版が必要です。この記事で扱う60fps化は「同じ長さ」なので、保存の制限はかかりません。
Pro 版では何が変わりますか
動画の長さの制限がなくなり、120fps、480p〜4K の出力解像度、保存品質の中・高、推論解像度の中・高が使えます。スローモーションで作った動画の保存も Pro の機能です。キューは最大10本まで積め、バックグラウンド処理にも対応します(iOS の猶予時間の上限により最大30秒)。買い切りの非消耗型アイテムで、月額や年額のサブスクリプションではありません。価格は App Store の表示をご確認ください。
iPad で使えますか
iPhone 専用のため、iPad には対応していません。対応 OS は iOS 16.0 以降です。
画質も良くなりますか
なりません。フレーム補間は動きの滑らかさを改善する処理で、解像度やノイズ、圧縮による粗さには手を入れません。
動画がどこかにアップロードされることはありますか
ありません。変換は端末内で完結し、機内モードでも動作します。通信が発生するのは App Store での価格取得・購入・復元のときだけです。
保存先はどこになりますか
写真ライブラリと「ファイル」アプリのどちらかを選べます。処理完了時には通知が届きます。
処理中に他のアプリを使えますか
無料版では処理中にアプリを離れられません。Pro 版はバックグラウンド処理に対応しますが、iOS が与える猶予時間の上限で最大30秒です。長い処理では「処理中は画面をロックしない」設定を有効にして、画面を表示したままにしてください。この設定は無料版でも使えます。
うまくいかないときはどこを見ればいいですか
設定ごとの挙動や処理が止まる場合の対処はサポートページにまとめてあります。